ERSATZ
ERSATZ MASK · 詳細レポート
§BRAND OBJECT
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企画 & デザインコンセプト

1-1. ersatzはなぜマスクを作ったのか

ersatzは、COVID-19以降、現実空間の価値が仮想空間1へと移っていくモメンタムのなかから生まれた集団です。だからこそ、パンデミックの時代を象徴するオブジェとなりうるグッズを作りたいと考えました。

パンデミックの時代、私たちは常にマスクをつけて過ごし、マスクはウイルスを遮るためだけのものではなく、自分を表現する顔の一部として定着しました。日常的な距離のなかで、言葉を介さずともersatzをもっともよく物語る手段として、私たちはマスクを選びました。

1-2. なぜデンタルマスクを選んだのか

ersatzのロゴは、白と黒で1と0というデジタル性を表し、折れ曲がった線で三次元空間を描くことで、3D仮想空間を扱うersatzのアイデンティティを象徴しています。

マスクにはくちばし型、立体型、デンタル型などさまざまな種類がありますが、なかでもデンタルマスクは、折りたたまれた状態から広げて使う(2D→3D)という点で他のマスクと異なり、着用すると多様な方向(ベクトル)の面が生まれるという特徴があります。

折りによって立体感を表現することをテーマに、ロゴとデンタルマスクの特徴が互いにシナジーを生むデザインを目標に定めました。

さまざまなマスクの種類

1-3. デザインコンセプト:ロゴの折れ目とマスクの折り線を一致させる立体感のシナジー

ersatzのロゴは平面(2D)でありながら、線の折れによって立体(3D)を表現しています。一方マスクは、平面が折られてできた立体(3D)でありながら、単色で構成されているために、実際よりも造形が単純に感じられがちです。

ロゴをマスクに柄として載せる際、ロゴの折れ目とマスクの折り線を一致させるデザインによって、ロゴとして見ても、マスクとして見ても、より立体感が際立つというシナジー効果が期待できます。

デザインコンセプトの概念図
別のコンセプトもありました — デザインコンセプトβ:平面と立体を行き来するデザイン

ersatzのロゴは、線の折れを用いて平面(2D)のなかに立体(3D)を内包しています。次元を越えるというデザインコンセプトをマスクに当てはめるなら、逆に、複雑な立体として存在するマスクへ平面的なイメージを投影することもできるはずです。

デザインコンセプトβの概念図
FIG. 03 — デザインコンセプトβの概念図
制作した柄 & 3D検討イメージ
FIG. 04 — 制作した柄 & 3D検討イメージ
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用いた技術

柄を印刷した展開図を折って作る紙のモックアップで、デザインを確認しました。①柄を手作業で描き起こし、②印刷した展開図を手作業で折るという工程に想像以上のリソースがかかったため、これを技術的に解決しようと考えました。

①入力変数から柄を自動生成するアルゴリズミック・デザインツールを制作し、②仮想空間でマスクを展開したり遠近感をテストしたりするシミュレーションを行うことで、費やすリソースを大幅に削減し、膨大な数の柄を緻密に検討できるようになりました。

手作業で作った紙のモックアップ

2-1. アルゴリズミック・デザインツール — 柄デザイン

マスクのカスタム文化が発達した台湾のデンタルマスク製造工場と協業し、マスク展開図の図面を入手しました。マスクの折り線の上で折れ目の角度が変化していく柄を、基準となる太さ・繰り返し回数と、各段の角度・太さを設定すれば自動で生成されるようにしました。デザインは0.1mm、0.1°単位で検討しました。

2-2. シミュレーション — マスクの形態変化

次に、柄を印刷して手で折るモックアップ制作の工程を簡略化する必要がありました。実際のモックアップを作らずとも着用時の形態や柄の印象を確認できるよう、図面の数値どおりに3Dモデリングしたマスクを物理シミュレーションで展開しました。現実でマスクを広げる場合と比べると環境的な誤差があり、正確さには欠けます。しかし、柄ごとの展開時の見え方を、簡単なテクスチャの差し替えだけで確認できるため、膨大な数の柄を検討するうえで非常に有効な方法でした。

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柄デザインのプロセス

3-1. 出発点の設定

ロゴのデザインルールをできるだけ保った柄をマスクに載せることから始めました。折れ線の太さや角度の比率は保ちつつ、折れ目がマスクの折り線の上に来るように回転させました。ロゴは2回折れるのに対し、マスクの折り線は3本あるため、折れを1回追加しました。

柄の出発点の概念図

3-2. 入力変数の調整

展開図の上にロゴのデザインルールを保った柄を載せて終わりにするのではなく、展開した後に見える印象を最大化するため、折れ線の角度・太さ・間隔を変化させながら、各要素が立体感とロゴとの類似性に与える影響を検討しました。

3-3. 柄デザインの変遷


STEP 1) 出発時点の柄です。相対的に立体感が乏しく、やや平板な印象です。

STEP 2) マスク下部での折れ線の不連続を解消するため、柄の下端の折れ角度を小さくしました。

STEP 3) オリジナルのロゴのように、折れ線の太さを下にいくほど太くしました。陽炎や炎のような、立ち昇るイメージを感じさせます。

STEP 4) 折れ線の太さがいったん太くなり、再び細くなるようにして、立体感を最大化しました。
膨大な数のオプションを検討しました
FIG. 13 — STEP 1
FIG. 14 — STEP 2
FIG. 15 — STEP 3
FIG. 16 — STEP 4

3-4. 遠近感のシミュレーション

仮想空間でのマスクデザインには、遠近感によって変化する印象を検討しやすいという利点があります。人物モデルにマスクを着けてカメラの距離を変えながら、遠くからの印象と近くからの印象をあわせて考慮しました。

遠近感のシミュレーション

3-5. 印刷誤差への対策

デザインの意図どおりであれば、柄の折れ目はマスクの折り線の上に正確に位置するはずです。しかし、生地に柄を印刷する工程では、機械の振動によって印刷誤差が生じます。これに対応するため、柄の折れの始点と終点をそれぞれ上下に±1mmずつ広げ、余裕をもたせました。これにより、印刷誤差が生じても±1mm以内であれば、マスクの折り線が柄の折れ目の範囲内に収まります。

印刷誤差対策の概念図
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試作品の制作

柄デザインを完成させたのち、先に協業した台湾のマスク製造工場と細部の仕様を詰め、試作品を確認しました。

4-1. 印刷色・生地の決定

意図した立体感を最大化するため、白と黒のコントラストが強く出るよう、印刷色にはC30 K100を、フィルターの役割を果たす内側の生地には白を選びました。

4-2. 実着用テスト

最終生産に入る前に、仮想空間で絞り込んだ2つの最終候補を試作品として制作し、現実の空間で実際に着用して最後の確認を行いました。

試作品の実着用テスト
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完成

(2022年6月 記)